先天性疾患児者をはじめ病気のある子どもを取り巻く環境は医療の発展と共に大きく変化しており、10年前では出生の際に助からなかった命が助かるようになりました。これらの病気のある子どもたちが幼児期、小児期、思春期を経て、大人となる患者が着実に増えています。ですが、その反面、病気の子どもたちは幼児期、児童期、青年期の心理発達上の課題に対して、様々な困難があります。
先天性疾患児者は生活上の規制はあるものの一般就労ができる者、就労したいが通院等の条件が合わず求職中の者、短時間の非正規雇用もしくは福祉的就労ができる者、さらに就労は難しいが、社会的に自立することができる者、こうした自立が叶わない者等、様々な生活状況です。また就労が叶っても通院や生活上の規制について同僚に話すことができず、無理をして体調を崩し退職せざるを得なくなる者もいます。こうした現状を踏まえ、本人の健康状態に応じて、希望する生活を実現し、就労のみならず社会の中で役割をもって生活していくことを可能にする支援が求められています。
令和2年度事業の目的
そこで、先天性心疾患児者の社会的自立に向けた実態・ニーズを把握し、先天性心疾患児者が社会の中で主体的に役割を果たし、自分の望む生活を可能にするための発達支援と、それを可能にする医療・福祉・教育等の関係者、関係諸機関のネットワークを構築します。その結果を基に、各地で取り組み可能な支援事例を公表し、日本中どこにいても、その人が生活している地域で、先天性心疾患児者の社会的自立を促す発達支援のネットワーク作りに貢献していくことを目的として、1年間取り組みをしてまいりました。将来的にはこのネットワークが病気と発達障害とがある児者の発達支援に資することも念頭において、事業を進めてきました。
4つの柱立て
本事業は、4つの柱立てを主として取り組みました。
- ① 「社会的自立が困難な先天性心疾患児者の発達支援ネットワーク形成事業」
- ② 「協議会の設立」
愛媛県内にて先天性心疾患児者の社会的自立に向けた状況の理解と支援ネットワークを形成しました。 - ③ 「当事者交流会」
先天性心疾患児者のピア活動の推進のため、交流会を開催しました。 - ④ 「シンポジウムの開催」
先天性心疾患児者の社会的自立に向けた状況の理解啓発のために、シンポジウムを開催しました。